日経BP社は「2000年間題」というホームページで「2000年まで○○○日」というY2Kカウントダウンに踏み切った。終末論風に表現すればハルマゲドンのカウントダウンである。科学技術のハルマゲドン(善と悪の最終決戦)、世紀末崩壊(センチュリー・メルトダウン)、千年紀の欠陥(ミレニアム・バグ)、ソフトウェアの溶融(ソフトウェア・メルトダウン)など、およそ考えられる限りの奇想天外な表現を乱発して科学音らが警告してきたのは2000年問題だ。2000年問題は、アメリカではY2K(イヤー・オブ・ヅーサウザンド)プロブレムとも呼ばれている。1990年代以前に開発されたコンピューターシステムは、本来4桁で記録すべき西暦年号を、下2桁に短縮して記録されていた。当時はメモリーもディスクも容量がギリギリだったため、資源を節約するために世界中のシステムエンジニアたちがそうしたのだ。1988年なら88と記憶するこのやり方でこれまで問題は発生しなかった。2000年なんて未来だと思っていたのだ。しかしこれは時限爆弾だった。2000年になると、コンピューターは年号を2桁しか,認識しないので、2000年と1900年の区別が不能になり、動作が狂ってしまう。コンピューターはいまや日常生活のありとあらゆる場面に没透しているので、2000年問題を放置すれば金融システムはめちゃめちゃになり、株券や手形は紙くずに、クレジットカードはただのプラスチック枕になってしまう。預金は1990年に預けたのか2000年に預けたのか不明になって金利も支払われない。空を飛ぶジェット機はダッチロール(迷走)し始め、エレベーターは停止して人々を暗闇の中に閉じこめる。航空機やエレベーターはコンピューターの内蔵クロックを基に運行管理されているので、日付記録がり狂うとシステムごとおかしくなってしまうのだ。放っておけば、このようになる。危機を前にしてソフトの修正は遅々として進まず、アメリカ連邦政府でさえ1998年も押し迫った時期に「9省庁が2000年1月までにシステムの修正が間に合わない」と発表したほどだ。時限爆弾を抱えたコンピューター社会の不安を背景に、IBMの元テクニカルライターのジェイソン・ケリーはコンピューターのハルマゲドンを題材に小説を書き、インターネットに告知した。本のタイトルも『Y2Kもう手遅れだ』となっていて、いかにも世紀末の危機感を募らせる。2000年問題の解決のためにすべきことはあまりに多く、人が足りず、ソフト修整コストも,高くつくことから、苦し紛れの「和暦変換方式」を採用する日本企業も現われた。これは西暦だと4桁が必要でも、平成に直せば2桁のままでも当分使えるというのだ。平成が99年間を超すとは、だれひとり思っていないということだろう。人々のそんなあわてふためきようをよそに、インターネットのY2Kカウントダウンは不気味にハルマゲドンまでの残り時間を缶げるのだった。